この記事は自作キーボード Advent Calendar 2018 その3の10日目の記事です。
MiniAxeとは?
MiniAxe は、実用ギリギリ(と思われる)のキー数の非常にコンパクトなキーボード(キット)です。以下の特徴があります。
- 36キー
- 3行5列プラス3で18キーが片手分になります。
- 左右分割式
- Let’s Splitに代表される左右それぞれの手用に分割された形式です。
- 直行配列(Ortholinear)
- 別名格子配列とも言われ、格子状にキーが配置されています。
- ProMicroなし
- 自作キーボードでよく利用されているArduino互換のコントローラProMicroを使わずに、同等の機能を実装しています(購入者が半田付けします)。
- マトリクス用ダイオードなし
- キー数が少ないのでダイオードを使用したキーマトリックスを実装していません。各キースイッチはMPUに直接接続しています。
- 部品は全て表面実装部品を使用
- USBコネクタは、いわゆる「もげ」対策のため一部スルーホールになっています。
- キーボード間はUSB MicroB OTG ケーブルによる接続
- 形状はUSBですが、流れる信号はUSBではありません。
- スイッチソケットを採用
- キースイッチの交換が容易に可能です。
完成させ、使いこなすのは少し大変ですが、きっと達成感や満足感を感じていただけると思います。
作った経緯
私が自作キーボードに興味を持ったのは、今年(2018年)の始めごろでした。Let’s Splitに関する話題をチラチラと目にするうちに、自分でも作ってみたいと思うようになり、海外のサイトからPCBやスイッチ、キーキャップなどパーツを買い揃え、実際に出来上がったのが、2018年の春頃でした。
しばらくは、キーマップをあれこれいじって楽しんでいましたが、数字キー(記号キー)がないことがどうにも不便で、1行多いIrisに乗り換えてみました。実際に使ってみると、今度はその大きさが不満に感じ、Let’s Splitに戻ってきました。
その頃、国内でもHelix、Crkbdなどのキットが出始めたのでぜひ使ってみたいと思っていましたが、いつもあっという間に売り切れてしまい、しばらく買えない状況が続きました。
そのうち、欲しいものが買えないのなら、自分で作ってしまおう、自分の望むものすべてを盛り込んで実現してみよう、と思い生まれたのがMiniAxeです。
設計のポイント
設計するにあたって考えていたことは、
- 小さく
- 薄く
- キースイッチは交換したい
でした。
「小さく」の部分では、ホームポジションから一切手を動かすことなく、操作できることを目指しました。当初は4行5列で考えてましたが、最下行の薬指、小指付近に位置するキーは押下するのが難しく、Let’s Splitでもほとんど使っていなかったので、削除して、3行5列プラス3としました。
「薄く」という部分では、ProMicroとTRRSのコネクタの高さがネックでした。国産の分割キーボードでは、この2つをPCBの裏側ではなく、キースイッチの外側に配置することで薄さを確保するデザインが多いのですが、そうすると「小さく」するのをあきらめることになるので、どちらを優先するかは結構悩みました。この時はキット化することを考えていなかったので、自分がはんだ付けできれば良いと思い、ProMicroをやめてMPUを直接載せることにしました。また、ProMicroをやめると決めたことで、MPUのIOピンも全て自由に使えるようになり、ダイオードなしでスイッチを直接接続できるようになりました。残るネックは厚みのあるTRRSですが、これもProMicroをやめた勢いでバッサリ切り捨て、USBコネクタを使うことにしました。
「キースイッチを交換したい」は、ソケットを採用すれば良いのですが、キースイッチを全て外すと、PCBがボトムプレート上に落ちてしまう、ということが懸念されました。これを解決する方法として、PCB側にあけるスペーサ用の穴をぴったりの大きさにするか、PCBの上下にスペーサを入れて挟み込むか、のどちらかしか思いつかず、ずいぶんと悩みましたが、穴の精度が悪ければ最悪はまらないこともあり得るので、後者にしました。これによって、「薄く」の部分が少し犠牲になってしまいますが、両立させるためには仕方ないと、割り切りました。
ここまで決まれば、あとは手を動かすだけでした。(が、実際に作り始めるとそれはそれでいろいろと問題がありました。その辺りはまた別の機会にでも書いてみたいと思います。)
オススメのポイント
最後に、MiniAxeのこんなところがお勧めです、というポイントを挙げてみます。
はんだ付けがちょっと難しい
部品の小ささもそうですが、MPUは0.8mm、USBコネクタは0.65mmとピッチが狭いのが難しいです。特にUSBコネクタは、端子の上にシェルがオーバーハングしてるので、はんだ付けしにくいのもポイントが高いです。
最終的には、ProMicro(相当のもの)とキーボードの両方を作った気分が味わえます。
少ないキー数を使いこなせるとかっこいい
少ないキー数のキーボードを使いこなせるとクールですよね。レイヤーを多用することになると思いますが、どのレイヤーに何を置くか、日々試行錯誤することが修行の様でなかなか楽しいです。
キースイッチが交換できる
ソケット方式を採用していますので、いろいろなキースイッチを気軽に試してみることができます。実際、うるさそうだなと思って敬遠していた青軸も、モディファイアに使えばカチカチ楽しい、という発見がありました。
これを読んで、MiniAxeちょっと気になるという方は、こちらで購入できますので、ぜひ!
明日の担当は、keyaki_namikiさんです。
(この記事はMiniAxe with Gateron Silent Black & PMK Grab Bag仕様で書きました。)